習熟度でインターフェースをわけないということ

shibafu

はてなおやさんがあいかわらずいいことを言っています。この文章の本質は最後のほうに書かれていることだと思いますが、その前振り(といったら失礼かも)もインターフェース的に重要です。

はてなブックマークをより使い易いように改良したいと思うけど、それは「初心者に使い易い」ようにする観点ではなく、あれはウェブを見るのが大好きな人たち向けのツールなんだから、初心者が成長してきたころに使うためのツールなんだと。

だから、「使い易い」というのと「初心者にわかりやすい」というのは別の話なんだ、そういう風に考えながら色々改善する。「初心者"にも"分かりやすい」のはもちろんベストですが、それが「初心者向け」に変化してしまって、やたらと説明文の多い設定画面だとか、最小限で済むはずのインタフェースが冗長になってしまったりとか、そういう罠にはまらないように。
naoyaのはてなダイアリー - 3年前の自分は別人、を他のひとにも当てはめてみる。

ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針という本読んでいてそこに似たようなことが書いてあったので以下に抜粋。ちょっと長いけど重要なので一段落引用します。問題あるようならあとで削除するかも。

デザイン段階を簡素化しようとして大雑把な仮定を置いてしまうと、ユーザ層毎に異なったインターフェースをデザインするという落とし穴に、簡単に落ちてしまいます。こういった仮定は、ある程度ユーザ集団が大規模になると、各ユーザにとってはほとんど見当違いの結果をもたらすのです。解決策はインターフェースをユーザ層という観点から見るのではなく、個人という観点から見ていくことです。ソフトウェアを長期に渡って使用する人々はすべて、比較的短い期間でコマンドの学習を済ませ、それよりもずっと長い期間で型にはまった作業を(できれば自動性を獲得して)行っていくわけです。このため、学習しやすく、理解しやすいシステムをデザインすることは無論ですが、長期にわたって効果的に使用できるようなシステムを保障することがより重要となるのです。これが当てはまらないのはすべてのユーザが初心者である、つまり僅かな期間しか使用されないため、習慣が問題とならないアプリケーションだけなのです。
3.6 初心者・熟練者への二分化という神話

習熟度でインターフェースを変更してしまうということは「初心者」期間に習得した習慣を捨ててしまうということ。これでは「上級者」になったとたんに「上級者」でなくなってしまう。「習慣の形成」についても重要なことが書かれています。

理想的なヒューメイン・インターフェースとは、ユーザの作業におけるインターフェース要素を良性の習慣へと変えるものなのです。製品を複雑かつ使いづらいものにしている問題の多くは、習慣形成における有用な属性と有害な属性を配慮していないマン・マシン・インターフェース・デザインによって引き起こされているのです。
2.3.1 習慣の形成

他にも色々重要なことが書いてあって今は線引っ張りながら2回目の読み返しをしています。一段落が長めではっきりいって読みにくいのですが、製品のインターフェースに関わる人には読んで欲しい本ですね。重要点ピックアップしたら後でまとめるつもりです。

ちなみに著者はAppleMacintoshプロジェクトのリーダーを努め、Macintoshインターフェースのコンセプトを決定した人です。あとエディタとか検索インターフェースに関する項目読んでると暗にEmacsイイ!って言ってるんじゃないかと思える部分があってEmacs使いは読んでて嬉しくなるかもしれません。実際にEmacsのいいところを指摘している部分もあります。

ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針

ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針